「SES営業は無能」「SES営業って何もしてないよね」。エンジニアからそう言われたり、自分でも成果が出ずに「自分は無能なのでは」と感じたりしている方も多いはずです。
先に結論をまとめます。
- SES営業は、面談しても契約に至るのは1割程度。成果が出ない時期があるのは、能力より構造の問題です
- 失注の多くは、営業トークではなく手元の人材と単価の組み合わせで決まります
- 一方で、スキルシートを右から左へ流すだけの「横流し営業」は、現役のSES営業からも無能と評価されています
- 抜け出す鍵は、コントロールできる範囲を広げることと、「エンジニアが選ばれる理由」を自分で作ることです
この記事では、実際の現場データと、現役SES営業がnoteで発信している一次情報をもとに、「無能」と言われる理由と抜け出し方を解説します。
SES営業が「無能」と言われる3つの場面
1. エンジニアから見て「何もしていない」
一般的な営業職は、顧客の課題を聞き、自社の商品と結びつけて提案するのが仕事です。ところがSES営業は、その一部だけでも仕事が回ってしまいます。
ITストラテジストの山口ばくさんは、営業の仕事を10項目に分けて整理し、SES営業が十分にこなしているのはそのうち3項目程度だと分析しています。営業全体の7割ほどを経験しないまま成り立ってしまうことが、SES営業の怖さだという指摘です(「無能なSES営業」にならないためのたったひとつの視点|山口ばく)。
2. スキルシートを横流しするだけ
エンジニアにスキルシートを書かせ、そのまま顧客に送る。こうした働き方は、同じnoteで「商品を陳列しているだけの作業員」と表現されています。
この悩みはSES営業本人も自覚しています。転職サイトの求人票に、SES営業経験者に向けて「スキルシートを横流しするだけで介在価値を感じない」という葛藤を代弁する文言が載っているほどです(ビズリーチ掲載求人)。
3. 成果が出ず「自分は無能だ」と感じる
外からの評価だけでなく、自分自身で無能だと感じるケースもあります。いくら動いても契約が決まらない、決まりかけた案件が急に流れる。SES営業を何年も続けている人でも、こうした経験は避けられません。
本当に無能なのか?現場データで見る構造的な原因
実際の現場で扱った案件のやり取りを振り返ると、成果が出ない原因の多くは個人の能力では説明できません(社名・個人名は伏せています)。
面談しても契約は1割程度
ある現場では、面談から契約に至る割合は約12%でした。8〜9回面談して1件決まる計算です。どれだけ優秀な営業でも、空振りのほうが多いのが前提の仕事です。
自分では防げない失注が起こる
取引先から「数日以内に候補を出してほしい」と依頼され、急いで提案したのに、取引先側の検討体制が変わって案件ごと見送りになったことがありました。先方から、短い期間で対応してもらったのに申し訳ない、という謝罪つきです。
現役SES営業のゆとリーマンさんも、同じような経験をnoteに書いています。元請けが了承してもエンドの予算が止まる、オファー直前にエンジニアが辞退する、参画後に無断欠勤が起きる。人の気持ちはコントロールできず、諦めるしかない場面はあると認めています(SES営業は自分でコントロールできないことが多い他力本願ビジネスなのか|ゆとリーマン@SES営業)。
失注の多くは「人」と「単価」のミスマッチ
提案できる人がいないと返したとき、取引先から「スキルを持つ人がいないのか、単価が合わないのか」と聞かれたことがあります。SES営業の成否は、トークの上手さより、提案できるエンジニアがいるか、単価が合うかでほぼ決まります。
条件が厳しいのに売上が小さい案件もある
特定業界で3〜5年以上の経験に加え、業界特有の商流や力関係の理解まで求められる案件がありました。それでいて稼働は月0.1〜0.3人月です。こうした案件で人が見つからなくても、それは営業の無能さではありません。
それでも「無能」と評価されるSES営業の特徴
構造的に難しい仕事であることは確かです。ただ、現役のSES営業は「構造のせい」で片付けることにも厳しい目を向けています。
ゆとリーマンさんは、コントロールできないことがあるのは一理あると認めつつ、その範囲を広げる努力をしない人が文句を言う資格はない、と書いています。同じnoteでは、本人がBP(協力会社)営業として取引を切ってきた相手の多くが、以下のような基本をやっていない営業だったとも述べています(ゆとリーマン@SES営業のnote)。
2本のnoteと現場の実例から、「無能」と評価されやすい営業の特徴を整理すると次のとおりです。
| 特徴 | 何が問題か |
|---|---|
| スキルシートを顧客に丸投げする | エンジニアが選ばれる理由を何も作っていない |
| 案件情報を深掘りせず流す | 中身が薄い案件は、エンジニアにも選んでもらえない |
| 商流の深い会社とばかり付き合う | 情報が遅く、単価も低く、決まりにくい |
| 面談後の情報を回収しない | 顧客の懸念も、エンジニアの本音もわからないまま |
| 失注をすべて「運が悪かった」で終わらせる | 次に活かせる学びが残らない |
| 契約の数字を即答できない | 稼働率や精算幅を聞かれて答えられず、信頼を失う |
「無能」から抜け出すための6つの具体策
ポイントは2つです。コントロールできる範囲を広げること、そしてエンジニアが「選ばれる理由」を自分で作ることです。
- 商流の浅い取引先を増やす:エンドか元請けとの取引を軸にし、深くても二次請けまでに絞ります。情報が早く、単価の交渉余地も大きくなります
- 案件情報は必ず深掘りする:なぜ人が必要なのか、チームの状況はどうか、現場で何に困っているのかまで聞きます。中身のある案件はエンジニアにも選ばれやすくなります
- スキルシートに「選ばれる理由」を書き足す:山口ばくさんのnoteでは、同じ「Java経験5年」でも、業界経験として書くか、曖昧な仕様でも関係者と調整して進められる人として書くかで、伝わり方がまったく変わると例示されています
- 面談の前後で情報を回収する:顧客からは合否の判断ポイントと懸念を、エンジニアからは参画の決め手と迷っている点を聞きます。面談後のフィードバックで懸念を払拭し、後押しできる材料を集めます
- 契約の数字を即答できるようにする:稼働率を下げたときの請求額、精算幅の超過・控除額、初月の日割りは、その場で計算して答えられるようにします(計算方法はSES営業とはの記事で解説しています)
- 事務担当と先回りで連携する:参画開始の前日に契約書を締結したいという急な依頼も起こります。オファーが確定する前から契約書の準備を進めておくと、取りこぼしが減ります
1と2、4はゆとリーマンさんのnoteで挙げられている実践を、3は山口ばくさんのnoteの視点を、5と6は現場の実例をもとにまとめたものです。
それでも向いていないと感じたら
上の6つを試しても成果が出ない、そもそも仕事を楽しめない。そう感じるなら、無理に続ける必要はありません。SES営業で身につけた経験は、他の仕事でも評価されます。
| これまでの経験 | 活かしやすい仕事の例 |
|---|---|
| エンジニアのスキルを見極め、案件と結びつけてきた | IT人材紹介のキャリアアドバイザー、エンジニア採用担当 |
| 単価・稼働率・契約条件を管理してきた | IT企業の営業事務・契約管理、受託開発の営業 |
| 顧客の課題をヒアリングしてきた | IT製品・SaaSの法人営業 |
また、同じSES営業でも、商流の浅い会社や、エンジニアの育成に力を入れている会社に移るだけで、働きやすさが大きく変わることがあります。会社の選び方は良いSES企業と悪いSES企業の見分け方で解説しています。
まとめ:「案件を流す人」から「選ばれる理由を作る人」へ
SES営業が無能に見える理由の半分は、面談の1割程度しか決まらない確率や、自分では防げない失注といった構造にあります。成果が出ない時期があっても、それだけで無能だと決めつける必要はありません。
一方で、スキルシートを横流しするだけの営業は、エンジニアからも同業者からも無能と見られます。商流の浅い取引先を増やし、案件とエンジニアを深く理解し、選ばれる理由を自分で作る。それができれば、SES営業は「無能」とは無縁の仕事になります。

